現状としては、出資持分のない医療法人と出資持分のある医療法人が混在しています。
厚生労働省としては、医療の非営利性を重視して、出資持分のある法人が出資持分のない
法人に移行するよう進めていますが思い通りに進んでいません。
そこで、今回の納税猶予策をきっかけとして出資持分のない医療法人に変更を促したいと
考えています。
出資持分があるということは医療法人に対して財産権を所持していることになりますが、
医療法人の非営利性や公益性を鑑みると財産権を認めたくない(持分なしに移行して欲しい)と
いうのが厚労省側の考えです。
以下の資産を有する医療法人を想定します。
Ex:医療法人の貸借対照表
資産の部 負債・資本の部
現金預金・・・200百万円 出資持分A・・・100百万円
出資持分B・・・100百万円
※改正前後での課税関係の整理
【改正前】
Aが持分を放棄する⇒Bの持分が相対的に増えるためBに対する贈与税が課される。
Aが死亡する⇒Aの相続人A’が相続し相続税が課される。
【改正後】
Aが持分を放棄する⇒Bは贈与税を課されることになるが、一定の要件を満たせば
納税を猶予してもらえる。
Aが死亡する⇒Aの相続人A’は相続税を課されることになるが、一定の要件を満たせば
納税を猶予してもらえる。
※一定の要件とは
・医療法人が認定医療法人であること
認定医療法人とは、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を
改正する法律附則第10条の4第1項に規定する認定医療法人をいう。
・認定医療法人になるには
平成26年改正医療法施行日から起算して3年を経過する日までの間に厚生労働大臣の
認定を受ける。改正医療法施行日は平成26年10月以降を予定している。
※猶予された贈与税・相続税を免除されるには
・認定移行計画に記載された移行期限までに、認定医療法人の持分の全てを放棄した場合
要約すると、持分あり医療法人において一部の出資者が持分を放棄したり、相続が発生した
場合でも、認定医療法人であれば、納税が猶予されます。
但し、猶予された税金を免除してもらうには受贈者や相続人が自身の出資持分を移行期限
までに放棄する必要があります。
なお、移行期限までに放棄しない場合は猶予税額の納税(+利子税)を求められます。
もちろん、国に帰属させるために医療法人を設立・運営している訳ではないと思いますが、
今後の納税対策や事業承継を考えるうえで上記の納税猶予策を活用する方法も有効な
手段として検討するべきと思われます。
茨城本部 楢原英治
記事のカテゴリ:税務情報